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第7話 黒の騎士の死

Penulis: スナオ
last update Terakhir Diperbarui: 2025-05-25 14:35:39

「親父……?」

 その言葉に全員が反応する中、男だけは無感動に槍を振るい、ホムラをその力で吹き飛ばす。

「ホムラちゃん!」

 サイカとリオが駆けつける。ホムラは打ち所が悪かったのか、頭から血を流していた。

 その姿に静かな怒りを燃やす桜夜は、静かに自分の手に炎を灯す。

 それはホムラの炎が魔力と精霊の力でなるのに対して、聖なる霊力を燃やしてなされる神聖なる炎だった。

 桜夜が男に手をかざすと、男は燃え盛る炎に包まれた。しかし男はすぐに槍で炎を穢していく。穢された炎は倍になって桜夜を襲った。

「ぐっ……」

 桜夜は苦悶の表情を浮かべて膝をつく。炎が熱いせいではない。その穢れた炎が彼を彼たらしめる聖獣、鳳凰の力を奪っていくからだ。鳳凰の力を失った先にあるのは、、だ。それは桜夜と鳳凰があの日結んだ契約である。

 静かに男は桜夜にとどめを刺そうと近づく。その間に入ったのはサイカだった。リオもホムラの治療をしながら男を睨む。

「あなた本当にお父さん!? どうしてお母さんを解放してくれた桜夜さんを傷つけるの!?」

 男は答えない。ただ槍を横凪ぎにふるい、サイカを吹き飛ばした。

「きゃあ!」

「サイカちゃん!」

 桜夜に歩み寄った男は静かに……。

「む」

 そこで気配を感じた。かつて男の盟友が扱っていた四神と称えられる聖獣の気配。今の状況で四神とやり合うのは面倒だった。男は桜夜たちの誰にもとどめを刺すことなく、その場を去った。

 力を失い、倒れる桜夜。サイカとホムラを抱きしめて泣くリオ。

 駆けつけた玄武たちが見たのはそんな風景だった。

to be continued

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